企業買収と新料金体系の影響で『FGO』など長期運営ゲームの“ゲーム内フォント使用料”が 最大50倍に高騰へ

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タニザキ
2025年12月2日
ニュース

『Fate/Grand Order』をはじめ、多くの日本ゲームでおなじみの“フォント”が、今まさに予期せぬ危機に直面している。
長年にわたり日本の開発者に重宝されてきたフォントサービスの利用料が、一夜にして50倍以上に高騰したのだ。

GameMakers や Game*Spark など複数のメディアによると、Fontworks は 11月28日付で、同社の主要ライセンスプラン「LETS」の新規申し込みおよび更新サポートを終了したという。


従来の LETS プランは、年額わずか約6万円で日文字体ファイルをゲームへ直接同梱できることから、多くの開発会社に支持されてきた。
『ペルソナ5』(Atlus)、『モンスターハンター3G』(Capcom)、『Fate/Grand Order』(TYPE-MOON)など、名だたる人気作でも採用されている。

問題となっているのは、Fontworks を買収した米国企業 Monotype が提示した新しい料金体系だ。
Monotype の公式サイトで公開されている標準的な年間プランは、なんと 約320万円(従来比 約54倍)。
さらに費用が跳ね上がっただけでなく、利用条件も大幅に厳格化されている。

新プランでは、高額を支払っても最大5つのアプリケーションにしか利用できず、しかも 各アプリの登録ユーザー数は上限2万5千人までという制限がある。
大規模商業ゲームでは到底適用できない水準で、現場からは困惑の声が上がっている。

『進撃の巨人 VR: Unbreakable』や『Soul Covenant』などに関わるUI/UX デザイナー Yamanaka 氏 も、SNS で深い懸念を示した。
同氏によれば、フォント会社を乗り換える場合、統合作業のやり直し、QA(品質保証)テスト、再ビルド・再配信 といった工程が不可避で、開発負担は極めて大きいという。

企業買収と新料金体系の影響で『FGO』など長期運営ゲームの“ゲーム内フォント使用料”が 最大50倍に高騰へ

海外メディア Game Developer も、関係者の発言を引用しながら、長期運営型ゲームが直面する深刻なリスクについて分析している。
とりわけ、10年以上サービスを継続している『Fate/Grand Order』のようなタイトルでは、フォントの変更は単なる差し替え作業では済まず、ブランド全体のトーンにも影響する“大規模プロジェクト”になりかねないという。

すでに一部の開発者はサービスの乗り換えを決断している。
Indie-us Games の代表 Alwei 氏 は、LETS 継続の見積りを受け取ったものの、あまりの高額さから断念し、最終的に DynaFont へ切り替えたと明かした。
同氏は「まだ広く議論されていないが、業界の一部ではすでに大きな問題になっている」と述べている。

しかし、各社が直面するのは高騰したコストだけではない。
代替サービスが事実上不足している点も大きな課題だ。
現在の LETS の代わりの候補としては mojimo-game が挙げられるものの、これは個人開発者向けサービスであり、運営元は Fontworks と同じ。
そのため、将来的に方針が変わるリスクが残り、根本的な不確実性は解消されていない。

Monotype は米国本社を構える世界的なフォント企業で、2023年9月に日本の大手フォント会社 Fontworks を買収。
今回のライセンス体系変更は、買収から約2年で実施されたもので、既存の利用者を Monotype 自社フォントサービスへ誘導する 意図があるとみられている。


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